血管内治療において用いられる塞栓材料の代表的なものはプラチナ製の離脱式コイルである。主に脳動脈瘤の内腔に留置し血栓化させるために用いられるが、その微細構造は、臨床用の透視装置では、観察することができなかった。理研のマイクロ
CT を用いて、治療後の脳動脈瘤の摘出標本を観察したところ、瘤内でのコイルの破損(図9)が認められた。
コイル塞栓術中は何事もなく、又、臨床機での透視でもこのような破損は確認できなかったため、このような現象は知られていなかったものと思われる。
また、コイル塞栓術では瘤内体積の 20 - 30 % に相当するコイル留置がほぼ限界であり、瘤内の遅い流れは完全には停止していない可能性もある。また、動脈瘤の頚部ではコイルが常に血流に押され続けることとなる。このため、コイルの長期的な安定性が問題となっている。マイクロ
CT などによるコイル三次元構造の計測は、コイルの長期的な変形に対しても計算機シミュレーションによる成果が期待できる。
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図
9 マイクロCT でのコイル透視画像
矢印部分でのコイルの損傷が確認された。コイルの径(プライマリー径)は約0.35mm
で、0.0044 mm 程度の白金線(フィラメント)から作成されている。コイルが壊れ、矢印部では一本のフィラメントが直接観察されている。 |
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