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MRIやX線、CTなどによる医療画像の情報はピクセルまたはボクセルで与えられており、その直交性を生かすことにより、メッシュを貼るというこれまでの作業を短縮し、なるべく個人個人の血管の特性をそのまま捉えて血流解析ができるようになることを目的として、複雑形状における直交座標系での計算方法を構築してきた。その結果、2次元においては、狭窄を有する場合でかつ拍動を伴う場合における血流解析および、頚動脈における計算結果を得ている。ここでは、2次元における拍動流を伴う狭窄をもつ血管内の流れの解析と、頚動脈における血流解析の計算結果を紹介する。
計算方法としては、Hirtら(1981)[1]のVOF法の考えに基づき、境界点の座標を決定し、格子点上および境界点上に未知数:速度と圧力を配置する。また、速度-圧力のカップリング形式を採用し、離散化には、基本的には西田の方法(1996)[2]を採用した。境界に隣接した点に関しては、中野らのNPLC法(1995)[3]を、圧力のPoisson方程式に対してはSOR法を適用した。さらに、時間方向に対する離散化に対しては、流速項においては2次のAdams-Bashforth法を、その他においては1次の前進Euler法を適用した。さらに、移流項に対しては風上差分を考慮し、圧力に関する境界条件においては、Neumann条件と基礎方程式と組み合わせた独自の方法を採用した。
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図1
Computational stenosis model. |
図2
Data conversion.
(図2-(a): Original image, 図2-(b): Enhanst image) |
数値例としては、例1として、図1のような管内の流れ[4],[5]を計算した結果と、例2として、実際の頚動脈における医療画像を用いて計算した場合(図2(a)、図2(b))の結果を示す。ただし、どちらの場合もノイズはないものとし、与えられる形状に対して、x軸方向にh、y軸方向にkのメッシュ幅をもつメッシュを張り巡らせ、領域の面積比として各ピクセルデータを与え、そのピクセルデータから計算を始めるものとする。流入条件としては、例1および例2ではそれぞれ図3
[6]、図4[7]を与える。
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図3
Graph of incoming flows. |
図4
Flowform in carotide artery by Olufsen (2000). |
また、例1の結果は、図5、図6、例2の結果は図7、図8、図9で示す。ただし、例2における流入部における血管の幅および最大流入量をそれぞれD=0.8cm、Q_p=30cm^3/sとし、1周期辺りの拍動時間をT≒1.1s,
粘性係数をμ=0.049g/(cm・s)、密度をρ=1.055g/cm^3とした[7]。また、tは無地元化したときの時間を表す。
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図5
Iso-velocity contours at Re=750, St=0.024
with ε=0.5 in sinusoidal case. |
図6
Iso-velocity contours at Re=750, St=0.024
with ε=0.5 in nonsinusoidal case. |
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図7
Iso-velocity contours at t=0.15 |
図8
Pressure contoures at t=0.15 |
図9
Streamlines |
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[1] |
C.
W. Hirt and B. D. Nichols, Volume of fluid
(VOF) method for the dynamics of free boundaries,
J. Comp. Phys., 39(1981), 201-225. |
[2]
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西田秀利,
非スタガード差分法による非圧縮性ナビェ・ストークス方程式の数値解, 日本機械学会論文集(B編),
62巻599号(1996), 2646-2651. |
[3] |
中野明・下村信雄・里深信行, デカルト格子系による任意形状物体周りの圧縮性粘性流体,
日本機械学会論文集(B編), 61巻592号(1995), 4319-4326. |
[4]
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H.
Liu and T. Yamaguchi, Effects of Pulsation
and Geometry on Post-Stenotic Oscillatory
Flow, JSME Int. J., Series C, 42, No.3(1999),
612-620. |
[5] |
H. Liu and T. Yamaguchi,
Waveform Dependence of Pulsatile Flow in a
Stenosed Chnannel, ASME J. Biomech. Ing.,
123(2001), 88-96. |
[6] |
O. R. Tutty, Pulsatile
flow in a constricted channel, ASME J. Biomech.
Eng., 114(1992), 50-54. |
[7]
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M. S. Olufsen, C, S.
Peskin, W. Y. Kim, E. M. Pedersen, A. Nadim
and J. Larsen, Numerical simulation and experimental
validation of blood flow in arteries with
structured-tree outflow conditions, Ann. Biomed.
Eng., Vol.28(2000), 1281-1299. |
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